『その場所でしか体感できない音楽として、耳を傾ける音楽でなく、その空間でお茶と同じように体に馴染んでいく音の集合。』
大隅茶全様 店内BGM「SADUB」詳細説明

今回の詳細説明は、九州アイランドワーク様から許可を得て詳細説明を掲載させて頂いております。
●曲全体のイメージ
九州アイランドワーク様との打ち合わせで、あまり主張をせず、空間に漂うような、そしてお茶を口に含んだ時の様に体の底から温まる様に、1時間のBGMでストーリー性を感じられ、徐々に終わりにかけて盛り上げて行くイメージにしました。
BGMの割合を、環境音 3: 音楽 3: 残りの4は、お店と来た人々の環境音で完成されるようなイメージでとお話を進めさせて頂きました。
環境音と音楽を掛け合わせつくったこのBGMの、環境音は大隅半島で育てている茶畑と周辺の環境音です。(今回、九州アイランドワーク様に録音して頂きました。)
茶葉が育つ為に必要な栄養(環境音)とお茶を口に含んだ時の落ち着いた気持ちを音(音楽)として表現させて頂きました。
BGMは環境音と、和音が静かに流れ、所々にビブラフォン、ピアノ、ドラムが入ります。ほとんどメインのメロディは入れておらず、お店に居る人々がメインのメロディの様になれば思っております。
また、メインのメロディの周波数帯域(800hz〜1500hzくらい)と話し声の帯域が近い為、その周波数帯域が空いている今回のBGMは、再生されていても話しやすく声も聞き取りやすい音楽になっております。
●BGM内の環境音の音の処理

環境音は11箇所の音があり、大きく分けると4種類
1.足音と環境音
2.茶畑の地面の環境音
3.茶畑から空に向けて環境音
4.川周辺の環境音
基本的に環境音は、風の音や飛行機、車の音など様々な音が入ってきます。その為、低域から高域まで複雑な音が絡み合ってきます。その中で聴かせたい部分をピックアップして、環境音として使わしてもらいました。

※周波数帯域の目安(低域0hz〜500hz 中域500hz〜2khz 高域2khz〜16khz)
1.足音と環境音。(志布志市有明町伊勢田付近、志布志市有明町野神)
始めと終わり45分くらいから入ります、ザクッザクッと気持ちいい音が出るようにで低域から高域まで幅広い音域で使わせて頂きました。
2.茶畑の地面の環境音。(志布志市有明町野神)
地面にいる虫や地面で聞こえる鳥の声が、とても気持ちが良かったので、その高めの帯域を生かしつつ中域から低域までカットさせて頂きました。
3. 茶畑から空に向けて環境音。(志布志市有明町野神)
地面の環境音と違って高さがあるので、鳥と木に生息する虫の鳴き声が強調されました。中域から低域をカットして、耳に刺さるような高域の一部だけ少し抑えさせて頂きました。
4. 川周辺の環境音(志布志市有明町伊勢田付近)
1.の環境音の後にたどり着くのが、この川の環境音です。川のせせらぎと川周辺に生息する鳥の鳴き声が気持ちよく聴こえるよう、中域を生かしつつ、低域を 少しカットさせて頂いきました。
●BGM内の音楽の詳細

BGMで使われる音の音階は、四七抜きといった音階をつかい、日本の童謡や民謡に使われる音階を使わせて頂きました。何処か懐かしい、日本人の中にある音階かと思います。
音楽のテイストはイージーリスニングとダブの間のようなテイストです。
リバーブやエコーなどが掛かって、音が広がり、染み込む様なエフェクトで表現しております。
●BGM内の音(音楽側)の処理
音楽は柔らかい音に仕上げて空間に馴染むようにと思い、それぞれの音のアタック部分を加工していきました。

例)アタック-手を叩いた時「パン!」の「パ」の部分。
アタックが耳に強く届いてしまうので、それぞれの音のアタック部分の周波数帯域を削りました、
削るだけでは、こもったり、痩せた音になってしまうので、音を歪ませる加工を施し、音の芯を感じずに音(イメージを伝えるのは難しいですが)が鳴る様な、優しく聴こえる事に意識して音を作り上げていきました。
●環境音+音楽での詳細

店内に居る人々が話しやすい様に、声の周波数帯域(赤の四角の部分)は音をあまり入れ無い様にしました。
声の周波数帯域を全く音を入れない場合、2.3. の環境音で10羽くらいのカラスが遠くの方で鳴いているのが聞こえます(青の四角の部分)。そのカラス達を全てカットしてしまうと、高域の虫や鳥の鳴き声が痩せた音になってしまう為、遠くのカラスの鳴き声に対して、お互いが邪魔にならない程度に、和音や、ピアノ、を被せて、お互いを相殺するような効果を狙いました。
音響心理学的に言うとマスキング効果に当たると思います。
レセプション に参加させて頂いた時にオーナーの堀口様から、「雨が降っていた時、店内は全く外の雨の音が聞こえなかったです。」と言われました。
その時は、どういう事だろうと考えてしまったのですが、
外の雨の音に対してもマスキング効果があったのかなと、この詳細をまとめている時に気付きました。
外の音と店内の音を完全にBGMで区切れる事で、店内の空間をより一層楽しめると思います。堀口様アドバイスありがとうございました。
●スチームバスターの汽笛の音

茶畑で除草するための機械で、農薬を使わず蒸気の力で除草します。
スチームバスターに搭載された汽笛は実際に汽車に使われていた汽笛で、この地では活躍する度に汽笛が鳴る名物マシーンだそうです。今度、機会があれば実際に見てみたいです。
この汽笛が何処で鳴るのか、このBGMをお店でお楽しみ下さい。
●マスタリング処理での詳細
M/S処理という、RLで再生される音楽を更にM(ミドル=中心) S(サイド=外側)に分ける処理を施しました。

環境音全体と音楽の中域から高域は、M(ミドル=中心)に寄せて、音楽のドラムのキック音とベース音は S(サイド=外側)に逃しました。
そうする事で、キック音とベース音が外側からフワッと包み込む柔らかい低音に変わり、その中心で環境音が聞こえるように、立体感を出しました。
その場所でしか体感できない音楽として、耳を傾ける音楽でなく、その空間でお茶と同じように体に馴染んでいく音の集合になればと思っております。
